中小企業向け研究開発支援策が5年間再承認へ

米国物理協会(American Institute of Physics: AIP)は3月24日、中小企業イノベーション研究(Small Business Innovation Research: SBIR)と中小企業技術移転(Small Business Technology Transfer: STTR)プログラムの再承認法案を連邦議会が可決し、約半年間の資金と公募の空白が解消に向かうと報じた。国防総省(Department of Defense)やエネルギー省(Department of Energy)などの外部研究費を中小企業の研究開発へ割り当てる年40億~60億ドル規模の制度を5年間延長するもので、重点分野向けの賞新設や対中リスク抑制策を盛り込んだ一方、大幅な予算削減や厳格な応募制限は見送られた。失効中は、中小企業の資金繰りや大学の研究計画に深刻な影響が生じていた。下院通過により法案はトランプ大統領に送付され、研究基盤の正常化が期待されている。 AIP “Congress Passes Small Business Research Reauthorization” (03/24/26) https://www.aip.org/fyi/congress-passes-small-business-research-reauthorization

マイクロソフト社とエヌビディア社、AIで原子力建設を迅速化

アクシオス(Axios)は3月25日、マイクロソフト社(Microsoft)とエヌビディア社(NVIDIA)が、人工知能(AI)を活用した原子力発電所建設に関する取り組みで提携すると報じた。テキサス州ヒューストンで開かれたエネルギー会議「セラウィーク(CERAWeek)」でマイクロソフト社が明らかにした。「原子力のためのAI(AI for nuclear)」構想の下、許認可手続きの効率化、設計の標準化、運転最適化までを一貫して支援するAIを組み込んだツール群を整備するとし、アーロ・アトミクス社(Aalo Atomics)が生成AIによる許認可支援ツールを使って手続きを92%短縮し、年間約8,000万ドルのコスト削減効果を得た事例も紹介した。従来の高度個別化設計から、規制基準と技術的責任を維持しつつ、反復可能な参照型の開発手法へ移行させる計画で、生成AIは過去の許認可実績との整合確認や、着工前の計画シミュレーションにも役立つという。運転段階ではAI搭載センサーが異常を早期検知し、電力網の安定化につなげていくと説明している。 Axios “Microsoft and Nvidia team up on AI nuclear push” (03/25/26) https://www.axios.com/2026/03/24/microsoft-nvidia-ai-nuclear-energy-plants

2025年のエネルギー貯蔵導入、過去最高更新

アメリカン・クリーン・パワー協会(American Clean Power Association: ACP)は3月24日、2025年のエネルギー貯蔵設備新規導入量が前年比52%増の18.9ギガワット(GW)と過去最高を更新したと発表した。ウッド・マッケンジー社(Wood Mackenzie)との共同報告書によると2025年10~12月期の導入量も5.8GWと四半期ベースで過去最高となり、同期間の系統用大型蓄電池導入も前年同期比31%増の4.9GWとなり 13州に拡大した。住宅用蓄電池は2025年通年で2.7GWを導入し、前年比92%増となった。税額控除期限前の駆け込み需要に加え、高い料金水準や需要ピーク時に蓄電池活用を促すカリフォルニア州の料金制度などが成長を後押しした。住宅用市場でも同州は拡大を主導した。地域・商業・産業用市場も州政策を追い風に同四半期に77メガワット(MW)を導入し、過去最高を更新した。26年から31年に累計500GWhの新規導入を見込む一方、政策や通商措置、需要動向により導入量の基本見通しが17%下回る可能性も指摘した。 ACP “REPORT: 2025 U.S. Energy Storage Installations Set New Record, Surpass 2024 by 52% Mar 24 2026” (03/24/26) REPORT: 2025 U.S. Energy Storage Installations Set New Record, Surpass 2024 by 52%

地球工学、冷却効果も不確実性 研究拡充と枠組み整備が課題

政府説明責任局(Government Accountability Office: GAO)は3月24日、地球工学が地球温暖化を緩和する可能性がある一方、環境や公衆衛生への影響が極めて不確実で、研究強化とガバナンス整備が急務と発表した。太陽光を宇宙へ反射して地表を冷やす技術で、成層圏エアロゾル注入や海洋上の雲の白色化(Marine Cloud Brightening: MCB)が有力手法とされるが、前者は二酸化硫黄などの微粒子やガスを成層圏に放出し、後者は海塩粒子を海上の低い雲に散布して反射率を高めるものでいずれも継続的な散布が必要である。現時点では計算機モデルや実験室研究にとどまり、エアロゾルの変化や雲との相互作用の理解も不十分で、屋外試験も豪州でのMCB実験の例はある一方、安全性や倫理面への懸念から中止された計画もある。ただ2022年以降には気球による二酸化硫黄の成層圏への輸送や航空機での散布技術開発に資金調達した企業も現れ、GAOは政策判断に必要な情報の収集方法や技術導入に伴う地政学的リスク抑制に向けた枠組み整備が必要と提言している。 GAO “Science & Tech Spotlight: Solar Geoengineering” (03/24/26) https://www.gao.gov/products/gao-26-108837

NSF、米国重要鉱物チャレンジの勝者を発表 国内供給網の確保へ

米国科学財団(National Science Foundation: NSF)の技術・イノベーション・パートナーシップ局(Directorate for Technology, Innovation and Partnerships: NSF TIP)は、ストライド・ベンチャーズ(STRIDE Ventures)が2025年11月に開始した「テック金属実用化チャレンジ(Tech Metal Transformation Challenge)」で勝者として選出された8チームを発表した。選出チームは、第一段階(10か月)向けに最大200万ドルを受け取り、複雑な国内廃棄物から金属を抽出・転換・回収して先端製造用の高性能マテリアルとして活用できるエンドトゥーエンドの試作システムについて、ソリューションの研究開発に取り組む。テック金属実用化チャレンジの勝利チームは、産官学の領域専門家で構成される審査員の前で自分達のアイデアを売り込んだ18チームの中から選出された。第一段階の後、最大6チームが第二段階(12か月)へ進み、市場の検証に各250万ドルを受け取る。更に、第三段階(12か月)へ向けて最大4チームが選出され、各300万ドルを受け取り、技術の市場化に取り組む。 National Science Foundation “NSF announces winners of the U.S. critical minerals challenge to secure key domestic supply chain” (03/24/26) https://www.nsf.gov/news/nsf-announces-winners-us-critical-minerals-challenge-secure

ORNLの「フォトン」枠組み、AIの脆弱性発見を拡張

オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory: ORNL)の人工知能セキュリティ研究センター(Center for Artificial Intelligence Security Research: CAISER)は、エクサスケールで人工知能(AI)モデルにおける脆弱性を迅速に検知する助けとなる枠組み「フォトン(Photon)」を開発した。この枠組みにより、AIベースのシステムがセキュアで攻撃に対して頑強であることを確実にすることができ、エネルギーや医療、金融、国家安全保障といった重要領域でAIモデルを導入する際の重要な保護措置となる。ORNLの研究者は既存技術の「ディープハイパー(DeepHyper)」に逆転の発想をすることでフォトンを設計した。ディープハイパーは元々、大規模なニューラルネットワークを訓練して最適なネットワークパラメータを見つけることを目的として開発されたものであるが、フォトンは、この目的を逆転させ、悪意のある行為(最も効率的な攻撃のパラメータ)を検出するよう訓練されている。 Oak Ridge National Laboratory “Photon framework scales AI vulnerability discovery” (03/24/26) https://www.ornl.gov/news/photon-framework-scales-ai-vulnerability-discovery

エネルギー省とミズーリ大学研究原子炉、放射性同位体の供給網を確保

エネルギー省(Department of Energy)科学局(Office of Science)内の同位体研究開発生産局(Office of Isotope R&D and Production: IPR)と、ミズーリ大学研究原子炉(University of Missouri Research Reactor: MURR)は3月24日、ガドリニウム153(Gd-153)の定常生産を開始したと発表した。この提携により、IPRとMURRは、米国内で唯一のGd-153の供給源となり、世界でも2つしかない供給源の一つとなる。Gd-153は、単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography: SPECT)スキャナーとして知られる診断用画像装置の校正に不可欠であるが、2023年にGd-153の国際的な生産が停止し、世界的なサプライチェーン危機をもたらした。このニーズに対応しGd-153の確実な国内供給を確立すべく、IPRとMURRは共同で、新規の加速的生産プログラムの開発に取り組んだ。 Department of Energy “DOE and MURR Secure Critical Radioisotope Supply Chain for Medical Imaging” (03/24/26) https://www.energy.gov/science/articles/doe-and-murr-secure-critical-radioisotope-supply-chain-medical-imaging

保守派連合がAI規制強化に向け始動 政府規制緩和方針に対抗

アクシオス(Axios)は3月23日、保守系団体や子どもの安全擁護団体などで構成される新たな連合体「より良い未来のための同盟(Alliance for a Better Future)」が発足したと報じた。政府が打ち出した規制緩和路線のAI枠組みに対し、より厳格な人工知能(AI)規制の実現に向けて取り組むとし、同連合には家族政策同盟(Family Policy Alliance)や性的搾取根絶センター(National Center on Sexual Exploitation)、ヘリテージ財団(Heritage Foundation)などが参加を表明した。同連合は、「自社への法的免責を連邦レベルで確保しつつ、州のAI保護規定を排除するよう莫大な資金を投じて政府に働きかけている」IT企業に対し、2026年に少なくとも8桁の資金を投じ、連邦・州レベルでのロビー活動を展開するという。また今回の発表に伴う動画で「AIを人間がコントロールするのか、AIが人間をコントロールするのか」と広く呼びかけており、「AIの行方を心配する国民は83%に上る」という世論調査結果を示した上で、有効な対策が講じられていないと指摘している。 Axios “New conservative group launches push for tougher AI rules” (03/23/26) https://www.axios.com/2026/03/23/conservative-group-tougher-ai-rules

内務省とトタルエナジーズ社、洋上風力中止で合意 LNG生産へ移行

内務省(Department of the Interior:DOI)は3月23日、仏トタルエナジーズ社(TotalEnergies)が洋上風力発電プロジェクトを中止し、同開発向け約9億2,800万ドルをLNG生産へ振り向けることで合意したと発表した。電力コスト削減や電力の安定供給などに向けた取り組みで、約9億2,800万ドルをテキサス州リオグランデのLNGプラント(第1~~4トレイン:処理設備)の開発とメキシコ湾の従来型石油開発及びシェールガス生産に充て、欧州向けLNG供給と国内データセンターのガス需要に応じる。これに伴い、同省はトタルエナジーズ・リニューアブルズUSA社によるサウスカロライナ州ロング湾沖でのリース契約(1億3,333万3,333ドル)と、アテンティブ・エナジー社(Attentive Energy)によるニューヨーク沖でのリース契約(7億9,500万ドル)を終了し、全額を返金する。同社は今回の決定について、国内ガス生産と輸出に貢献する「資本の効率的活用」と位置付けており、ダグ・バーガム長官(Doug Burgum)は「同社の姿勢を歓迎する」と評価している。 Department of Interior “Interior and TotalEnergies Agree to End Offshore Wind Projects, Lowering Costs for American Families” (03/23/26) https://www.doi.gov/pressreleases/interior-and-totalenergies-agree-end-offshore-wind-projects-lowering-costs-american

DARPA、自律飛行システムを陸軍へ移管 H-60Mxブラックホークに搭載

国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)は3月20日、開発した自律飛行システムを陸軍へ移管したと発表した。これに伴い、陸軍はシコルスキー社(Sikorsky)のMATRIX自律化システムを搭載した汎用ヘリコプター「H-60Mxブラックホーク」の高度運用試験を行う。同局は、パイロットの負担を軽減して複雑な作戦環境での安全性と柔軟性を高めることを目的とする航空機乗員作業自動化システム(Aircrew Labor In-Cockpit Automation System: ALIAS)プログラムを推進し、基礎飛行から完全無人任務までを検証している。2022年には世界初の無人ブラックホーク飛行を達成しているが、今回の新たな成果に伴い、陸軍戦闘能力開発コマンド(Army Combat Capabilities Development Command: DEVCOM)が同機を「飛行ラボ」として運用し、高度任務特化型センサーの統合や減員・完全自立運用に向けた新たな戦術を探求していくという。 DARPA “DARPA-developed autonomous helicopter technology transitions to U.S. Army” (03/20/26) https://www.darpa.mil/news/2026/uh-60mx-black-hawk-army